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-ダメ経営者と言われないための人事労務管理の基本知識-第36回

AVH事務局 2016.09.01

第36回:【4つ実践力 -対話力- 】
社会保険労務士法人デライトコンサルティング
代表社員 近藤 圭伸

◆対話を通じた経営者の人事労務管理力の発揮

 ここまで経営者と部下との信頼関係を築くためには、経営者が人事労務管理の知識をもつこと、しっかり部下を観察すること、傾聴することや承認すること、そして対話をすることが重要であると述べてきました。

 しかし、それらが単体として機能しているだけでは、経営者と部下の本物の信頼関係を構築することは難しいでしょう。
 観察した事実を踏まえ、対話を通じて傾聴や承認をすることが重要なのです。まさにこれが「経営者の人事労務管理力」なのです。
 経営者が対話を通じて人事労務管理力を発揮してはじめて、経営者と部下との本物の信頼関係が築けるのです。

◆こんな場面は経営者の人事労務管理力発揮の絶好のチャンス

 日常仕事をしている中で、対話を通じた人事労務管理力を発揮すべき場面はたくさんあります。部下の「勤怠・服務規律」「モティベーションの維持・向上」「健康管理」「仕事のやり方」「目標の達成」に関することなどです。人事労務管理力発揮の場面は、経営者が見て見ぬ振りをしたり、観察をしていないと消滅してしまいます。大変もったいないことです。

 以下、経営者と部下の仕事の場面における、対話を通じた人事労務管理力発揮の事例をいくつかご紹介します。
 事例の経営者と部下の対話の中には、経営者の人事労務管理力(「人事労務管理の知識」「観察力」「傾聴力」「承認力」「対話力」)が発揮されている箇所(側線)があります。特にその箇所に注目してください。

◆勤務時間中に携帯電話をかける部下との対話

田中社長:山田君、ちょっと仕事の話があるんだけど。山田君は、勤務時間中によく席を離れて携帯電話をかけているみたいだけど、私用の電話なの?それとも業務に関係した電話なの?
     →仕事の話にかこつけて、言いにくいことでもさりげなく経営者から切り出す。対話のキッカケづくり

山田君 :すみません。私用の電話です。
田中社長:毎日2回くらい電話しているね。何か特別な事情でもあるの?

     →毎日2回くらいと回数を把握しているので部下をよく観察している

山田君 :いえ、特別っていうことではないんですが・・・実は彼女ができまして。彼女が自分の会社の休憩時間に電話をかけてくるんです。
田中社長:そういうことだったのか。でも、彼女は休憩時間かもしれないが、山田君は勤務時間だよ。

     →深くうなずき傾聴している。

山田君 :申し訳ありません。
田中社長:勤務時間に職務に専念しないのは、就業規則でいう服務規律違反にあたってしまうんだよ。勤務時間中、社員は職務を誠実に行う義務というものがあるんだ。それと、就業規則の目的は、会社のみんなが気持ちよくチームワークをもって働くことができるようにすることなんだ。

     →服務規律の知識、職務専念義務の知識を部下に伝えている。
     →部下との服務規律上の目的の共有化

山田君 :はい。
田中社長:それと、職場のメンバーが君のことをどうみていると思う?真面目に働いている社員からみたら山田君はどう映るかな?

山田君 :真面目に仕事している人からみたら、いい気分はしないと思います。
田中社長:そうだよね。山田君は、うちの職場ではムードメーカーだけど、このままでは  、
職場の雰囲気を壊してしまうよ。

     →存在感を認める承認

山田君 :社長、大変すみませんでした。以後気をつけます。彼女にもしっかり言いきか
せておきます。

     →上司との信頼関係が徐々にできあがる兆し

田中社長:わかってくれればいいんだ。山田君自身と職場全体のために気をつけてほしい
んだ。電話したいのであればこちらも休憩時間に所定の場所でね。
山田君 :はい。わかりました。

        →双方にとっての解決策の提示

【この事例の対話の成果】

 部下は、客観的に経営者から服務に関する事実を伝えられ、早期に自分がしている行動の過ちに気づくことができた。また、素直に上司のアドバイスを受け入れ修正した。その結果、生産性の低下を防ぐことができ、職場の規律を乱さずに済んだ。

あいち産業振興機構